直木賞作家 村山由佳さん最新作「放蕩記」〜「王様のブランチ」

放蕩記

2011年11月26日の「王様のブランチ」で紹介された、直木賞作家 村山由佳さんの最新作。母と娘の愛憎を描いた自叙伝的小説「放蕩記」です。

村山由佳さんの作品

天使の卵』『天使の梯子』『ヘブヴンリーブルー』『おいしいコーヒーの入れ方』などの恋愛小説の名手として数多くの作品を発表しています。
2003年には『星々の船』で直木賞受賞。2009年 『ダブル・ファンタジー』では女性の性を描き高い評価を得ました。

『放蕩記』のあらすじ

離婚歴のある小説家、鈴森夏帆(38)。恋人と悠々自適に暮らす彼女の心を波立たせるものは78歳の母・美紀子の存在である。

しつけに厳しく常に子供たちに対して優位に立とうとする母に、夏帆は幼い時より複雑な思いを抱いていた。

「機嫌のいい時は、少しも言葉をおしんだりしないで、私達をうんと褒めてくれた。でも、そうして子供のプライドを肥大化させておきながら、それを一瞬にしてぺしゃんこに潰すのもまた母だったのよ。あの母をどうしても上手く許すことができない。」

更に、母の性的なものへの潔癖さは異常なものだった。
思春期を迎えた夏帆は、そんな母への反発と甘美な背徳にかられ放蕩にふけっていく。
38歳になった夏帆が、ようやく母との関係を見つめ直そうと考えていた矢先に、父からの電話。母に認知症の症状が出ているという。夏帆は病を機に、これまで思いもよらなかった母の心の内を知ることになる。

村山由佳さんが語る、『放蕩記』、母との確執

『放蕩記』での母と娘の長年の確執を描いた部分には「村山由佳」さんの体験が色濃く投影れています。

「9割型そうです。私自身も厳しい母に育ててもらって、決して愛されなかったなんて言うつもりはないんだけれど、でも我慢のほうがやっぱり大きかった気がします。私と母の関係性とか解決がついていない問題を、ちゃんと作品を通して通過儀礼のようにそこを通りすぎないと、人間としても物書きとしても独り立ちできないんじゃないのかしらと思って放蕩記を書いた経緯があります。」

母との印象的な思い出は?

「小説に描かなかったことで言うと、片付けなさいと言われ部屋を片付けようとしなかったら、床にあるものを庭に放り出されました。それを拾いに行こうとすると全部に水をかけられて、反省するまで入れてもらえないという厳しエピソードもあれば、おんぶして夕日がきれいだからって見せに行ってくれて、そこで一緒にオリジナルの歌を作ったりしました。」

「子供心に母に気に入られることが全部の行動の規範になっちゃったんですね。母に褒められなきゃ、叱られるのは恐怖だし。じゃあ私にとって苦しかった過去が不幸だったか?と言ったら、もしそれがなかった私は物書きになっていないんです。母が厳しかったり、手に入れたいものが手に入れたれなかったり、甘えたいのに甘えられなかったりしたこと全部が私を作っていて、モノを書くことでしかその穴を埋められなかった。そう意味で母に感謝しなくてはいけないと思う。」

村山由佳」さんの思う母と娘の理想的な関係とは?

「娘の側がある時母を追い越して大人になるしかないかもしれない。母親に対して自分より常に大人であることを求めても無理で、娘の側が母親の母親になるぐらい、そのくらいの肝っ玉でいないと母との間の距離感は埋まることができないかなと思いますね。」

『放蕩記』に込めた思い

「母を愛せないというのは、この世の中口に出してはいけない感じを皆が持っていて、その事が罪であるような。もしかしたらそれを一旦認めたところから新しい関係性が始まるかもしれないんですよね。」

「これを読んでくださった皆様が、自分と母との関係を冷静に見つめ直すキッカケになったり、自分だけじゃないんだって思ってもらったり、そういう助けになったらいいなと思います。」


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