『鍵のない夢を見る』で直木賞受賞した辻村深月さんのインタビュー〜王様のブランチ

王様のブランチ 『鍵のない夢を見る』で第147回 直木賞を受賞した辻村深月さんのインタビューと『鍵のない夢を見る』のあらすじです。

24歳でデビューした辻村深月さんは、今回3回目のノミネートで直木賞を受賞しました。

2004年 『冷たい校舎の時間は止まる』 第31回 メフィスト賞受賞
2009年 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』  第142回 直木賞候補
2011年 『オーダーメイド殺人クラブ』 第145回 直木賞候補
2012年 『鍵のない夢を見る』     第147回 直木賞受賞

ご家族の反応は、「夫に3回くらい電話したけれどでなくて、そのあとで“やったー”喜んでくれました。」、お母様は「お母さんうれしいよ」と喜んでくれたそうです。
「素朴な言葉だけれど母親の口から“嬉しいよ”って素直な形で聴けたのがすごく嬉しかった」と話してました。

『鍵のない夢を見る』のあらすじ

普通の町で平凡に暮らす人々が、“ふと”魔がさす瞬間をとらえた5編の短編集。

『石蕗南地区の放火』と題した1編の主人公は、36歳独身の“笙子”。
彼女は公共施設などの保険事業を担う財団法人の地方支部で働いている。

ある日、実家の前にある消防団の詰所から不審火が上がり、笙子が被害額の調査にあたることになる。
現場では、消防団最年長の“大林”が指揮をとっていた。
彼を見た笙子は苦い思いをよみがえらせる。

以前合コンで会ったことのある大林。
彼の押しに負け一度だけ横浜でデートをしたのだが、デートに着てきたニットの胸に”Lemon“と書かれているのを見て後悔し始めた。

デートの後に携帯番号・アドレスを変え連絡を絶っていたのだが、大林はいまだに笙子のことを意識しているらしい。

その時、笙子の頭の中に「火をつけたのは、大林ではないだろうか。私と、自然な形で再開するため」という考えがよぎった。

やがて更なる放火事件が起こる・・・笙子のとった行動は?

タイトル『鍵のない夢を見る』への思い

この本のキーワードは「“些細なことのつもりなんだけど”という所から道を踏み外していく話。鍵を持っていなくて、出口がないような気持ちになっている。」

直木賞の選評について

直木賞の選評 地方に住む女性の今が上手に描かれている

物語の舞台はすべて地方都市。

「学生のころより、東京だけが日本の中で唯一違う場所なのかもしれないのに、そこで取ったデータが標準データと紹介されるのに違和感がありました。
“東京以外の地方がスタンダードでもいいのではないか”という気持ちがあり、一つの地方について深く書けば、他の地方に住む人たちすべてに届くのではないかという思いで書きました。」


直木賞の選評 いまどきの感性が登場人物に反映されている。

“メールであれだけ口数が多いのに、実際に会えば、私と目も合わせない”笙子が大林とデートした感想にも表れています。


「これまでの作品は、主人公が自分に似た部分があり、主人公を通じて伝えたいことが明確にあった。今回の話は“誰も自分に似ていない女の人5人を書いてみよう”と取り組んだ作品なので、それを評価してもらったと思うと、“これが多分小説を書くっていうことなんだろうな”と思えてうれしい。」

『鍵のない夢を見る』ポイント

切れ味の鋭い苦みのある短編集。
扱われている地方の閉塞感や女の子のコンプレックスは、辻村深月さんがずっとテーマとして書いてきたこと。

辻村深月さんは出産を経験されていますが、『鍵のない夢を見る』の中の1編にも、母親の立場の話もあります。
辻村深月さんの作品を初めて読む方にもオススメの1冊です。