第147回芥川賞受賞作『冥土めぐり』著者・鹿島田真希さんにインタビュー〜王様のブランチ

2012年7月21日 王様のブランチ 第147回芥川賞受賞作『冥土めぐり』の著者・鹿島田真希さんにインタビュー。

鹿島田真希さんは今回の第147回芥川賞受賞で、純文学の若手の小説家がとる3つの大きな賞をすべて受賞し、3冠作家となりました。

2005年 「六000度の愛」で三島由紀夫賞 受賞
2007年 「ピカルディーの三度」で野間文芸新人賞 受賞
2012年 「冥土めぐり」芥川賞 受賞

3つの賞を全部受賞したのは鹿島田真希さんで2人目、18年ぶりの快挙。

ご本人は「いまだにびっくりして、まだとれてないような感じ」と話していましたが、ご主人は泣いていたそうです。

第147回芥川賞受賞作『冥土めぐり』のあらすじ

裕福だった過去に執着し、借金を重ねる母と弟から資産家と結婚することを望まれていた“奈津子”。
彼女が結婚したのは市役所の職員“太一”。
結婚後に”太一”は不治の病にかかり働けなくなってしまった。
奈津子はすっかりあきらめ、自分の身に起こる理不尽や不公平、不幸について考えることもしなかったが、今を素直に生きる“太一”の姿に奈津子の心が変化していく。

『冥土めぐり』について

冥土の概念が、天国でも地獄でもない不思議なところ。
「主人公が心が死んでしまったような状態から、生きる生命力をもらって帰ってくる、そこが冥土を巡って帰ってきたという意味です。」

鹿嶋田さんは執筆にあたり、読者が深く共感できる表現を模索し、表現や言葉の選び方を変え10回書き直したそうです。

また、作品にリアリティーを与えるために、家族を参考に作り上げた奈津子の夫“太一”は、病気のため、車いすで生活を送る鹿嶋田さんのご主人を一部モデルにしています。

“太一”とご主人の似ているところは、「芥川賞をとったというのもそうですが、純粋なゆえに抜群の引きの良さ、自分に幸運を呼んでくれそうなものを漠然と持っているところ、毎日平和に楽しく過ごせたのは、夫のおかげだと思っています。」

『冥土めぐり』に込めた思い

「みんなに”ここわかる!”と思ってほしいので、たくさんの人に読んでほしいと思って書きました。」

「どんな小さな悩みでも、どんな大きな悩みを抱えている人でも、元気になれる小説だと思うので、ぜひ手にとって読んで、あと1日長く生きてみようと思ってほしい。」


すごく切ない場面やユーモラスな場面が詰まった1冊。
優しい夫を描くことにより、著者の鹿嶋田さんが救われ、読者も救われるんだなと感じます。