小説『共喰い』で第146回 芥川賞を受賞した田中慎弥さんを直撃インタビュー〜王様のブランチ

共喰い

王様のブランチで「祝!第146回 芥川賞受賞 田中慎弥さんを直撃」です。
田中慎弥さんは、『共喰い』で「第146回 芥川賞」を受賞されました。

1月17日(火)に第146回 芥川賞直木賞が発表されました。
受賞記者会見では、受賞の感想を聞かれ
『シャリーマクレーンだったと思いますが、アカデミー賞を受賞した時に「私がもらって当然だと思う」といったそうですが、大体そういう感じです。』と発言。
『とっとと終わりましょう』
『不機嫌に見えますが』と記者からの問に
『だからとにかくやめましょう』
歯に着せぬ言動で、日本中をけむにまいた田中慎弥さん。
会場は盛り上がっていました。

田中慎弥さんを「王様のブランチ」がインタビュー

芥川賞受賞の感想は

『ああ ようやく来たかという感じで、(発表時)一緒に待っていた編集者が物凄く喜んだので、自分が喜ぶ暇がなかった。周りがどんどん騒いで次の予定を組立て始めたので、それが未だに続いている感じです。』

インパクトのある記者会見について

『ああいう人がたくさんいる所で、話すのは本当に好きじゃないですね。だから「とっとと終われ!」って言ったんですけれど、言いたいことを言って終わろうと思ってああいう形になりました。』

「王様のブランチから」いつも原稿を書くのに使っている「2Bの鉛筆」をお祝いに貰うと、
ハニカンだように嬉しそうでした。

田中慎弥さんの受賞歴

2005年に『冷たい水の羊』で小説家デビュー、その後コンスタントに作品を発表し、数々の文学賞を受賞してきました。

2005年 第37回 『冷たい水の羊』新潮新人賞小説家部門
2007年 第34回 『蛹』川端康成文学賞
2007年 第21回 『切れた鎖』三島由紀夫賞

高校を卒業後、就職せずに小説を書いてきた田中慎弥さん。
『20歳くらいの時から、20年近く1日も休ますに、何かを書く』ということを続けてきたそうです。
『特別な才能があるとは思っていませんので、続けて行けなければと思う。』

第146回 芥川賞受賞作『共喰い』(1月27日発売予定)あらすじ

17歳の「篠垣遠馬」は、愛する女性にさえ手をかける父「円」を憎んでいた。
「おなじ目、しちょりいうそよ」
しかし、自分の中にもまた父と同じ暴力への衝動が潜んでいることを知る。
「あの父親の息子なんぞ。」
自分は父親の分身でしかないのか・・・。
「遠馬」は絶望する。

暴力的な父と、父によく似た自分を描く壮絶な物語。

作品と父親について

これまでも作品の中で、父と子の関係を描いてきた田中慎弥さん。
『父は、私が4歳の時に亡くなっているのでほぼ記憶はない。ただ当然、人間は父親がいて母親がいて生まれてくるので、当然の存在であるはずの父親が、自分には欠けているっていう感覚をそのまま持って生きてきました。その欠けている部分が、自分の創作に繋がっているのかもしれません。ただ欠けているところを埋めようとするのではなく、欠けているという感覚でそのまま書くという感じです。』

現在も母と2人下関で暮らしています。
お母様は『わりとのほほんとして、何かにつけてガミガミも言わないしのんびりした人です。』『子供の頃は父がいなかったので、かなり厳しかったですね。母も父がいないので子育てに必死だったと思います。』

『共喰い』のポイント

「影と影人が抱き合った。
橋の形は雨で消えた
川の上に直接影が浮かんでいた。」

人を殺す場面が、幻想的な影絵のように浮かんできます。

川端康成が好きだと言ってデビューした田中慎弥さんらしい、日本文学の王道をゆく作品です。