第150回直木賞受賞作『昭和の犬』 作者の姫野カオルコさんが語る〜王様のブランチ

2014年1月18日 王様もブランチ 第150回直木賞 受賞作『昭和の犬』について作者の姫野カオルコさんにインタビュー

『昭和の犬』で第150回直木賞を受賞した姫野カオルコさんは、ジム帰りに直木賞受賞の報告を聞き、ジャージ姿で受賞会見に出席。

「アーティストとしてはノミネートがうれしくて、受賞しましたとなると本が売れるので、ビジネスマンとしては受賞が嬉しいです。」

とユーモアたっぷりに語っていました。

『昭和の犬』のあらすじ

昭和33年に生まれ激動の時代を生きた女性の半生を、一緒に暮らす犬との日常をつうじて描き、人生のあり方について問いかけた作品です。

昭和33年に滋賀県で生まれた主人公“柏木イク”。
傍らにはいつも犬がいた。

父は気に入らないことがあると癇癪をおこし、母は不幸な結婚を呪い心を病んでいた。
理不尽な状況がイクにのしかかるが、恨むことなく彼女は静かに受け入れていく。

実家を離れて東京の大学に進んだイクだが、バブル景気でにぎわう都会の華やかさとは無縁の日々を過ごす。
独身のまま49歳になったイクが感じる思いとは。

時間をおき距離をおくことで見えてくる物がある。
5歳〜49歳まで激動の昭和を生きた平凡だけどしあわせな物語。

姫野カオルコさん『昭和の犬』に込めた思い

世の中には家にいるがつらいって家に育った人もいると思います。
その人たちにはそれぞれの辛さを持っていると思いますが、『昭和の犬』を読んで、「私だけじゃないんだ」と力強い気持ちを少しでも持ってもらえるんじゃないかと、そうゆう風に思ってもらえると嬉しいです。

姫野カオルコさんが語る『昭和の犬』

『昭和の犬』を書き上げたことでつらい気持ちになる時もあったのですが、同時にその時にそばにいた犬のことも思い出すので、微笑むような気持ちになれました。

姫野カオルコさん自身の虚実をないまぜにして描いた今作は、便宜的な分類をすると自伝的色彩の強い小説になっています。

キーワードは
「近いと大きくつかめないが、遠いとぎゅっとつかめる」

テレビのクイズ番組で「これはなんでしょう?」と一部がアップで映ると「なに?」ってなるけど、だんだん引いていくとわかるじゃないですか。そんな感じです。

「子供の頃にわからなかったことは、もしかしたらこういうことだったのかもしれない。」
具体的に言うと、
「父や母はなんでこんなに怒るんだろうと思ってましたが、時がたち当時をふりかえると彼らはいろいろと辛かったんだろ。」
ということがわかりました。

これまでに直木賞に4回ノミネートされ5回目で受賞した姫野カオルコさんが、作家人生を振り返ってみると

「平凡だけで平凡なりに辛いこともあって、でも平凡なりに楽しいこともあった人生でした。(直木賞を受賞したので)これからはわからないけど(笑)」

『昭和の犬』の犬を読むポイント

物語の中ではお父さんはすごく厳しくて怖い人で、お母さんはアナタをみていると嫌いなお父さんにそっくりだわと悪口も言う。
犬とかネコがいつも一緒にいますが犬だって言葉が通じているか分からない。
しあわせな物語だけれどもいろいろ大変事があった物語。

でも、その人生を振り返る時に主人公は、
「みな、いてくれてよかった。」
と思える。

作者の姫野カオルコさんの人柄が現れる一文です。