第149回 芥川賞受賞「爪と目」のあらすじと著者・藤野可織さんのインタビュー〜王様のブランチ
2013年7月27日 王様のブランチ 第149回 芥川賞受賞「爪と目」著者・藤野可織さんのインタビューと「爪と目」のあらすじです。
京都在住の作家・藤野可織さんは、2006年に「いやしい鳥」でデビュー。
奇妙で企みのある作風が注目を集めています。
芥川賞受賞を意識すると邪念が入ってしまうので、あまり考えないようにしていたのですが、「いつか取れると思っていたよ」といってくれる友だちに「いけへんかったらアンタのせいな!」と言っていたそうです。
小説を描く上で気をつけていることは、
「自分の頭のなかで本当にあったことを観察して記録するだけの“記録する係”と思って、あまり“我”が出ないように淡々と記録するつもりで書いています。」
「爪と目」のあらすじ
妻をなくした父。
父の不倫相手だった女性。
複雑な人間関係を娘の視点から描いた物語。
物語は“わたし”の母の死によって動いていく。
母の死は本当に事故なのか?
真相は明らかにされないまま、“わたし”と父、愛人の“あなた”による共同生活が始まる。
“あなた”は始め子供のいる生活を楽しみにしていたのだが、
「“あなた”は“わたし”に飽きてきていた。」
死んだ母があたえなかったスナック菓子を“わたし”に与え、“あなた”はコミュニケーションを拒んでいく。
その結果、徐々に“わたし”のなかに歪んだ感情が芽生えはじめる。
傷つけ合うことはないが、理解し合うこともない。
家族関係のズレから生じる痛みが、衝撃のラストに繋がる。
純文学的ホラー作品です。
語り手である“わたし”は3歳の娘。
その娘が父の愛人にたいして“あなた”と呼びかけている。
“あなた”という2人称で父の愛人に呼びかけることにより、娘である“わたし”との微妙な距離感を伝えています。
芥川賞選考会委員の作家・島田雅彦さんは、
「いきなり“あなた”へのよびかけから始まる2人称小説。
独特の眼差しで父の愛人を見つめていく、“あなた”という2人称が功を奏しているとの評価がありました。」
と話していました。
「爪と目」を読んだ谷原章介さんの感想
本当に怖い作品です。
耳元でずっと作者に語りかけられているような圧迫感があり、息苦しいけどドンドン読んでしまう。
母がなくなったのが一番の謎だが、“わたし”・“あなた”・父親の3人のなかの誰かが殺したんじゃないかなと思わせ恐怖が襲ってくる。
一番怖いのは人の心に住んでいる闇です。