第148回芥川賞受賞作『abさんご』著者・黒田夏子さんのインタビュー

2013年1月19日 王様のブランチ 第148回 芥川賞受賞作『abさんご』の著者、黒田夏子さんのインタビューです。

受賞のインタビューで
「生きているうちに見つけてくださいまして、本当にありがとうございました。」
と答えていた黒田夏子さんは、史上最年長75歳で芥川賞を受賞しました。

abさんご』あらすじ

abさんご』は構想10年。

昭和の家庭で生まれた子供が成長し、両親を見送るまでの物語。
15のコンテンツに分けられた記憶の断片が、独創的な表現で積み重ねられています。

「aというがっこうとbというがっこうのどちらにいくのかと」

というように、登場人物の名前や性別・固有名詞をいっさい使わず、
横書きで“ひらがな”を多用するなど日本語の限界にいどんだ特長ある作風となっています。

黒田夏子さんへのインタビュー

「小説というのはキャラクターやストーリーが重要なのかもしれませんが、それが中心ではないので、1行1行をそのまま音楽のようにたどっていただいて、それでどう受け取られようと良い、そういう作品を書きたいと思っています。」と話されていました。

“ひらがな”を多用していることについては、
「語源になるべくさかのぼるほうが連想が自由に広がるので、漢字で限定するより
読む方の考えの自由っていうのがあるような気がする。」

趣味は歌舞伎鑑賞で、歌舞伎の踊りがすきで坂東玉三郎さんの大ファン。
テレビは歌舞伎中継しか見ないそうです。

5歳から執筆を続けてきた黒田夏子さん。
本にしたいというのが長年の夢だったそうです。

芥川賞選考委員会の堀江敏幸さんの論評

本来ならば縦で書けば読みやすい“ひらがな”。
逆に横にするということで“ひらがな”の読みにくさというものを、
読者を何度も立ち止まらせ行ったり来たりさせながら、
時には漢字に変換させ、時には“ひらがな”のままでながさせ
そのつどの動きを強いながら進んでいく手法の面で
美しい作品に仕上がっている。

abさんご』のポイント

本当に不思議な文章で、わからなくて何度も読み返して行くうち
見たこともないフワッとした情景が立ち上がってくる、
読めば読むほど味が出る作品です。

王様のブランチのディレクターさんも最初「何がなんだか全然わかんない!」
と言っていたのが2晩読んだら「すごい良かった!」という言葉に変わったそうです。