直木賞作家・道尾秀介さん最新作『ノエル -a story of stories-』〜王様のブランチ

2012年9月22日 王様のブランチ 直木賞作家・道尾秀介さんの最新作『ノエル -a story of stories-』のあらすじとインタビューです。

2011年 『月と蟹』で直木賞を受賞。
2012年11月には『カラスの親指』が映画化公開されます。

最新作『ノエル -a story of stories-』のあらすじ

物語が生み出す感動と奇跡を描いた連作短編集。
作中作として書かれた童話が重要なファクターとなっています。

第1章『光の箱』

家庭が貧しいことを揶揄され小学生のころからいじめを受けてきた“圭介”。
中学に入ると肉体的な暴力が加わるようになり、心は限界を迎えつつあった。

秋の終わりに帰宅しようとしていた圭介に、同じクラスの女子“弥生”が「絵本、つくろうよ」と声をかけてきた。

突然の誘いに戸惑いつつも放課後、弥生とともに絵本作りを始めた。

町がクリスマスの声でにぎわう頃、ようやく本は完成した。
絵本の共作をつうじて互いに淡い恋心を描くようになっていた2人。

しかし、ある事件をきっかけに離れ離れになってしまう。
それから14年。
童話作家となった圭介は、同窓会に向かっていた。
その会場でかつて2人で作った絵本が信じられない奇跡をもたらす。

中学生の時に書いた1冊の絵本が切ない人生を動かしていく。


第3章『物語の夕暮れ』

元教師の老人が若かりし頃今は亡き最愛の妻に語って聞かせたカブトムシにまつわるおとぎ話『カブトムシ』。

ある日、カブトムシは大切にしていた光の箱を何者かに盗まれてしまう。
代わりになるものを必死で探し続けるカブトムシ。
それはいつまでたっても見つからなかった。

大切な人を亡くして生きがいを見失った老人に、このカブトムシの物語は何を伝えるのか?

おとぎ話は「誰にもわからないほどであるけれど、世界は少しだけ明るくなった。」と結ばれる。

道尾秀介さんが最新作『ノエル -a story of stories-』に込めた思い

3つの章に分かれていますが、第1章を書いたのは作家になり立ての頃。
いろいろな小説を書きやっと7年くらいかかり完成しました。

「すごくいいものができてホッとしています。」

最新作『ノエル -a story of stories-』を書こうと思ったきっかけは、第1章の作中作として出てくる童話『リンゴの布ぶくろ』。

会社員をやりながら兼業作家をしているときに書いた『リンゴの布ぶくろ』。
忙しく1,2時間しか寝ていない状態の時に作品を書くのには何か理由があるのですが、第1章の主人公の童話作家“圭介”に「なぜ物語を書いたのか」を語ってもらっています。

道尾秀介さんにとって物語とは「触媒」。
好きでも嫌いでも物語を読んでしまったら何かが変わるはず。
その人自身も物語となる。
触れ合う他の人にもつながっていく。
どんどんいろんな作用を起こしていくのが「物語」。

「世の中小説なんて読んでいる時間なんかあるかい、と思っている人にこそ読んでほしいです。人間ひとりひとりがみんな「物語」ということが伝わってくれると思います。」
「1日は短編小説。1年は長編小説。1章は大河小説。」

『ノエル -a story of stories-』の魅力

幸福感1000%の1冊。
読み終わった後にとっても幸せな気持ちになれます。

誰かが作った物語を、誰かが読んで励まされていく。
物語を作ること、読むことの喜びを見つけていくことが、リレーのバトンのように人から人へ受け継がれていきます。

『ノエル -a story of stories-』を読み終えたとき、に読者が喜びのバトンを受けっとっていることになる、とっても幸せになる1冊。

『ノエル -a story of stories-』谷原さんの感想

道尾秀介作品はえぐられるような現実が多いのですが、『ノエル -a story of stories-』はとっても温かいものがたりで、道尾さんは、物語の力、人の善意の力を凄く信じている方なんだなと思いました。