芥川賞作家・田中慎弥さん最新本『田中慎弥の掌劇場』〜王様のブランチ

2012年6月23日 王様のブランチ 芥川賞作家・田中慎弥さん最新本『田中慎弥の掌劇場』の紹介です。

3ページほどの短篇が37話収められている、田中慎弥さんの初短篇集。
読みやすく入りやすいので、田中慎弥さんの本を読んだことがない方にもオススメです。

田中慎弥さんが一番好きな作家は、ノーベル文学賞受賞作家“川端康成”さん。
現代の読者が読んだら戸惑うくらいに、余分なところが省かれているところが好きで、完結、冷酷なところに惹かれるそうです。

田中慎弥の掌劇場』のあらすじ

川端康成さんの1編が原稿用紙4枚ぐらいの、極短い作品を集めた『掌の小説』。
田中慎弥の掌劇場』は、“掌”という1文字を使ってやりましょうと始まった企画だそうです。

田中慎弥の掌劇場』は、毎日新聞西武本社版で2008年10月から連載が始まり、現在も月1回連載されています。
新聞の場合は他の記事を読んでいる人が読むわけなので、読者を意識し同じパターンではなく、幻想的なもの、現実的なもの、時事ネタなど、エンターテイメント性を意識して書いているそうです。

「うどんにしよう」という一編では
家族が出かけた日曜日、一人家で休日を楽しむお父さんがうどんを作る穏やかな日常の話ですが、冷蔵庫の中には、ハンバーグやアイスクリーム、カレーなどと一緒にさり気なく「人の手首」が・・・。

「え?」と思った後にゾッとする感覚と、どんな家族なんだろうと想像が膨らみました。

田中慎弥さんは、
『穏やかな話に、一言だけ怖いことを放り込み読者に放り出す事をやってみたかった。
印刷ミスじゃないの?・・・などいろいろな反響があったそうですが、上手くいったなと思います。』
『純文学系を読まない人にも読んで欲しい、もっと多くの人に読んで欲しいと思っています。』

田中慎弥の掌劇場』を読んだ、本仮屋ユイカさんの感想

落ちがないような話が多く、起承転結で言えば“起”の部分で終わっている。
だからこそ、「どういうこと?これどーなるの?」という謎と怖さがあり、自分で想像を掻き立てられ、読み手にゆだねられている作品です。

読み終わった後に話が膨らんでいき、一編一編がみじかいからこそ豊かな物語が自分の中で広がっていきます。