心が疲れたと感じる人に贈る『晴天の迷いクジラ』窪美澄/著〜王様のブランチ

2012年2月25日の王様のブランチで紹介された、心が疲れたと感じる人に贈る『晴天の迷いクジラ窪美澄/著です。

今、大注目の新人作家「窪美澄さん」の注目の最新作が『晴天の迷いクジラ』。

2010年に発表した『ふがいない僕は空をみた』は、10万部を突破。
2011年 本屋大賞 第2位
第24回 山本周五郎賞受賞
今秋に、映画公開予定になっています。

『ふがいない僕は空をみた』のあらすじ

年上の主婦と体だけの関係から抜け出せないでいる高校生の「卓己」
やがれその事実が世間にさらされ、卓己は自暴自棄になる。
未熟な高校生の恋愛をとうして、生きることの意味を問う、切なくも心にしみる物語。

晴天の迷いクジラ』あらすじ

●物語を紡いでいくのは、それぞれ生きづらさを感じている3人。
デザイン会社勤務「由人」(24)、好きだった彼女にふれられ、勤務先のデザイン会社も倒産の危機に。それまでの多忙な生活もたたり心を病んでしまった彼は、抗うつ剤が手放せない。

●「由人」が働くデザイン会社の社長「野乃花」(48)
彼女は若かかりし頃、幼い子供を置き去りにして故郷をはなれた。
それから30年、なり振りかまわずに働いてきたが、会社が倒産の危機にあってどうすることもできない。

●家出してきた高校生「正子」(16)
大切な友人をなくしたショックから、生きる意味を見失っていた。

いよいよ倒産をまのがれない状況となり、「野乃花」と「由人」は何もする気力も無くなっていた。
そんな折二人の耳に飛び込んできたのは、遠くの海でクジラが座礁したというニュース。

「海とか見たら気持ちも貼れるかもしんないしっ!
 クジラを見に行くんですよね! 僕と!」
そして、座礁したクジラの元へ向かう・・・。

「どうせいつかは死ぬのに、なんで生きてるんだろう」
親友を亡くし、生きる意味がわからなくなっている「正子」。

「迷っているのはクジラと同じだ」
なすすべもなく弱っているクジラの姿に、正子はなにをみいだすのか・・・。

晴天の迷いクジラ』作者・窪美澄さんにインタビュー

作家・窪美澄さんはフリーのライターとしても活躍しています。

2作目『晴天の迷いクジラ』のできばえは?

『自分が今できることを全部注いだという感じはするので、書ききったという感じはあります。』

『毎日頑張っているけど、朝起きたくないとか、ちょっと遠くに行ってしまいたいなとか、そう感じている人たちを書いてみたかった。』

行き詰った彼らが、「クジラを見に行く」というのはどんな意味があるのでしょうか?

『クジラは、“環境問題”とか“癒やし”とか、そういうイメージを背負いやすいじゃないですか。

クジラの気持ちは分かりませんが、しんどくないかな?変なイメージを背負わされているしんどい感じと、小説に出てくる3人のイメージもダブルことがあって、彼らの見に行くものはクジラでいいんだと思いました。』

物語に込めた窪美澄さんの思いとは?

『みんな精一杯やっているんですよね。やっているけど、歯車が合わなくてうまくいかないことが多い。いろいろな辛いことは、黒が白になるように解決することはあまり無いような気がします。

つらい気持ちでも、「明日はもしかしたらもう少し明るくなれるかもしれない」、「もしかしたら戻るかもしれない」と思いながら、やり過ごす気持ちの落とし所を見つけられると生きていけるかな。

もし辛いのであれば、「どう生きようか?」と難しく考えるよりも、「とりあえず明日までがんばろう」というところまで見えたら、いいのではと思います。』

『それでも、「毎日を生き続けていく」そう思えるヒントが、作品を読んで見つかれば嬉しい』

晴天の迷いクジラ』のおすすめポイント

「曇った心に薄日が差してくる本」

物語の前半で、3人の生きづらさが物凄くリアルに描かれます。
生まれた時代・場所・親により、人生がこんなにも左右されるのかと苦しくなります。

でも、クジラを見にいってから彼らの人生がちょっと変わります。
強烈な変化ではなく、ちょっとした変化。
薄日のようにちょっとの光で、押し付けがましくなく優しくはげましてくれる小説です。

日常から離れることにより視界がひらけてくる、ロードムービー的な面白さもあります。