ブレイク必至の極上ミステリー『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』 中山七里/著〜王様のブランチ

2012年2月18日の王様のブランチで紹介された、「ブレイク必至の極上ミステリー『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』 中山七里/著」です。

中山七里さんはデビューの時より非常に評価が高く、「このミステリーがすごい!」の最終選考に2作品残る快挙を成し遂げています。

『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞受賞。
青春音楽小説とアクロバティックな本格ミステリーと讃えられたこの作品は、22万部のベストセラーとなりました。
以来、ハイペースで執筆をすすめ2年で6冊の単行本を出版。

『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』のあらすじ

弁護士「御子柴礼司」その巧みな弁舌で、無罪もしくは減刑を勝ち取る辣腕弁護士。

「どんな罪名でも起訴されようが、必ず思考猶予を勝ち取ってくれる無敵の弁護士」

だが、高額の報酬を要求するため世間では悪評もある。

物語は、そんな御子柴が死体を捨てに行くシーンから始まる。
死んだ男は前科をネタに彼を脅迫している記者だった。

「車のトランクを開けて死体を詰め込む。」
「魂を失ったはずなのに、人は死ぬと重くなるのだろうか。」

捜査を始めた警察は程なく御子柴にたどり着く。
しかし、彼には死亡推定時刻法定で弁護していたという鉄壁のアリバイがあった。
いったいどいうことなのか・・・。

『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』の作者 中山七里さんとは

名前から女性に間違えられることも多いそうですが、50歳の男性。
ペンネームは地元、岐阜県下呂温泉ちかくの渓谷の名前からとりました。
サラリーマンと作家さんの兼業で、作品同様驚かされます。
お住まいは岐阜県からの単身赴任中で会社の寮で1人住まい。

音楽好きの中山さん、デビュー作の『さよならドビュッシー』とその続編『お休みラフマニノフ』は音楽をテーマにしており、他の作品に音楽の技術を盛り込んでいます。

デビュー3年目ですが、学生時代にも小説家を目指し江戸川乱歩賞に出したが2次で落選。
その後書く世界から遠ざかっていたが、6年前大好きな作家「島田荘司」さんのサイン会に行き小説が書きたくなり、すぐに書き始めたそうです。
『どんなに年を重ねていても、なにか残っているものがあれば可能性が開いていくんだろうなと思います。』

『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』をとおして中山七里作品の面白さに迫る。

一筋縄ではいかないキャラクタター

例えば、敏腕弁護士の御子柴。
高額な報酬をせしめる一方で、金にならない国選弁護の仕事も引き受けている。
表の顔と、裏の顔を持ち合わせているキャラクタター達。

『私自身、数限りないお客様の話を聞きます。こういう性格の人間はこういう喋り方をする、こういう表情をするというのはいくつも分類されている。それを誇張して書いただけです。個性はあるが、珍しい人たちではないと思います。人間にはいろいろな側面があります。』

先の読めない筋立て

『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』のもう一つの軸となっているのが、御子柴が弁護を担当する保険金殺人。犯人にされた家族のために犯人を解き明かそうとする。
そして、御子柴が重要参考人となった記者殺人事件。
一見関係のない事件が、複雑に絡み合い物語は思わぬ展開を見せていく。
そして、予想だにしない結末へ・・・。

『思い込みが、反転する時のカタルシス(すっきりすること)。それがミステリーの魅力の大きな1部だと思います。』

『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』のポイント

この作品はミステリー小説ですが、読者を楽しませてくれる要素が満載のまさに「エンタメのフルオーケストラ」です。
主人公を始めとしたキャラクタターが魅力的で、法廷ものや人間ドラマとしても楽しめます。
どんでん返しに次ぐどんでん返しで、最後の1行まで飽きさせません。
これだけ盛り込むとどこかで破綻してしまうのですが、見事に作り上げ読みやすくなっています。ミステリー初心者でもどなたでも楽しめます。

一気読みしてしまう1冊です。