「ブランチBOOKアワード2011」大賞に輝いた 金原ひとみ/著 『マザーズ』〜王様のブランチ

2011年12月24日の王様のブランチ「ブランチBOOKアワード2011」。今年の新刊の中から王様のブランチのイチオシ本を部門別に決定。大賞に輝いたのは 金原ひとみ/著 『マザーズ』です。

今年2人目を出産した芥川賞作家の金原ひとみさん。
マザーズ』は、母としてのご自身の体験を元に書き上げた小説です。

マザーズ』のあらすじ

主人公はそれぞれ深い悩みを抱える3人の母親たち。

育児に疲れ果て、息子を虐待する様になっていく専業主婦「涼子」
週末婚を続けながら何とか夫婦関係を維持している作家の「ユカ」
満たされない思いから不倫に走り妊娠してしまうモデルの「五月」

女性が子を産み母となった時、何を失い何を得るのか
母であることの幸福と孤独

母となった金原ひとみさんが描いたのは従来の母親像とは異質な母親たちの姿。
「いま私は、育児の意味が分からない。」
母であることの恐怖も、我が子への苛立ちもさらけ出しています。

「こんなに愛しているのに、私たちは一緒にいたら破滅する。」

3人の母親たちに思いもかけない結末が待っています。

マザーズ』作者 金原ひとみさんより

『自分が子供を持ってエ〜ってビックリしたというか、自分で処理し切れないような感情に身をさらさなければいけない瞬間が結構あって、小説の中で虐待してしまうお母さんとか、子供では満たされないところを抱えている主人公とか、そういう人たちにすごく象徴されていると思います。』

マザーズ』には、妻の悩みに理解のない夫たちも描かれています。

作品のなかに、夫がエロDVDを隠し持って、妻にすごく怒られている場面があり、金原ひとみさんのご主人は「きっと僕のイメージは社会的にああなちゃうんだ」とおっしゃっていたそうです。

『お正月に静かに読むのには良い小説かなと思います。』

マザーズ』のオススメポイント

小説の持つ力の一つというのは、読んだ人の日常が違って見えたり、輝いて感じられるところにあります。
マザーズ』は、ただ可愛いものというイメージのある子供が恐怖の対象であるとか、直視することを避けてきた人間の心理をすごくよく描いています。
そうすることで初めて見つかる親子の深い結び付きをうつしてくれて、普段小説を読んでも泣かない方でも、涙が流れるくらい感動的な作品です。