累計72万部の大ヒット作品 三上延(みかみえん)著『ビブリア古書堂の事件手帖』〜王様のブランチ

2011年12日3日の「王様のブランチ」で紹介された、三上延(みかみえん)著『ビブリア古書堂の事件手帖』です。今年の3月から口コミでじわじわ広がり、今や大ヒットの作品。

1巻、2巻の累計発行部数72万部、10代から50代まで男女問わす幅広く支持されています。入荷するたびに完売を繰り返し、来春に第3巻の発売も予定されています。

作者は「三上延」(40)さん、作家生活9年になります。これまでライトノベル中心に執筆してきました。「僕の出した本の中で1番のヒット作になったので、なぜヒットしたのか考えるのが僕の課題になりました。」

ビブリア古書堂の事件手帖』のあらすじ

鎌倉の片隅にひそっそりと佇む古本屋「ビブリア古書堂」。
店主は目も覚めるほど美しい篠川栞子(しのかわしおりこ)。アルバイト店員五浦大輔(ごうらだいすけ)と切り盛りをしている。

引っ込み思案で普段はおどおどしている栞子、しかし、一度本の事になると生き生きと話し始める。人一倍本を愛する彼女のもとには時にいわく付きの本が持ち込まれることも・・・。

夏目漱石の「それから」そこに記された夏目漱石のサインが意味することは・・・。

亡き父が娘に残した随執集、とり立てて目を引くことのないこの本が実は非常に価値の高いものだった。「この本をあなたのお守りにして欲しいということだと思います。」

あふれる知識で、古書の謎をひも解いていく栞子。

鎌倉の街が舞台なので、その叙情的雰囲気が好きだという読者の方も非常に多く、1話完結ですが、謎が謎を呼び、少しずつ謎が続いていき「この先どうなるんだろう?」と読み進めたくなる本です。

ビブリア古書堂の事件手帖』ヒットの秘密

1、『ビブリア古書堂の事件手帖』は文学の知識がなくても楽しめる。

「文学作品に限らず本全般が好き」という三上延さん。蔵書は5000冊、家族にはこれ以上増やすなと言われているそうです。

読書好きの著者だからこそ古今の名作にまつわる本を書けたわけですが、逆に本好きとして気をつけたことは「読者が必ずしも本について詳しいとは思っていなかったので、読者の視点に近い人を一人入れたほうがいいだろうなと思って」と大輔が生徒であり、栞子が先生である形になりました。

アルバイト店員の大輔は読書が大の苦手、そんな彼のために、栞子は文学作品を判りやすく教えていき、『ビブリア古書堂の事件手帖』を読んでいると作品の中に登場する文学作品まで読みたくなります。
「それが意図の部分もあってうれしいですね。(文学作品を)読んでいない人がどんなふうに思うのか、こういうところが面白いんだとコンパクトに伝えられればなと思ってます。」

2,『ビブリア古書堂の事件手帖』は古書の魅力の詰まったミステリー

「デビュー前に古書店で3年くらいアルバイトをしてまして、古書店を題材に作品を書いてみたいなと思っていました。」古書店勤務の経験をミステリーに生かした三上延さん。

古書の魅力とは「前の持ち主がいるからこそ古書になる、前の持ち主の何らかのドラマが浮かび上がる用な感じがします。」
「人の手を渡った古い本には、中身だけでなく、本そのものに物語がある」作中、栞子にもそう語らせています。

(1巻 第3話)ある日スーツを着たサラリーマン風の男が本を1冊だけ売りに来た。「この本を買ってもらいたいのだが、」本には「私本閲読許可書」と貼られている。「刑務所にいたってことですか?」それは受刑者が私物として本に貼られるものだった。

このエピソードは三上延さんが手にした本に、たまたま「私本閲読許可書」がついていたことで生まれました。
「最初は何か分からなかったんですが、調べてみたら受刑者の方が読んでいたものらしいということで、なぜ手放したのかとかいろいろ想像すると止まらなくなってしまって。」物語ではその本が夫婦の絆を深めてくれます。

3,栞子と大輔のほのかな恋

本の面白さを教えてくれる栞子に大輔はほのかな恋心を抱き始める。しかし、栞子は気付いているのかいないのか・・・。二人のもどかしい恋も作品の魅力の一部です。
「(栞子は)本当は気付いているのかもしれないのですが、まだ考えながら書いています。少しずつ仲良くお互いを理解していくようにして行こうと思ってます。」


来春に発売予定の『ビブリア古書堂の事件手帖』の3巻も楽しみです。